これはまだ、世阿弥がドルイドの僧として過ごしていた頃のお話。
当時錬金術を研究していた世阿弥は、教会の用事で、ウエストエンドにあるキースリーの町へと来ていた。
そこはクイーンズの様な喧騒からは想像もつかぬのんびりとした街並みで、町の人々も自然と共存する様にのんびりと暮らしている様に見えた。
この町の外れに住む医師、サングエに頼まれていた薬の原料を渡すのがドルイドの僧侶の役目だったが、今日はいつも運ぶ人物が怪我をして遠出が出来なくなってしまったので、代わりに世阿弥が此処までやって来たのである。
(成る程・・・此処なら修行には最適かもしれない)
キースリーを出て、森に囲まれた道を行く世阿弥は、自然との共存を教えとするドルイドの考えを実践する為の修行に多くの僧が此処を訪れる理由を肌で感じ、感歎に浸りながら歩いていると、目の前に洒落た造りの館が見えた。
(あれがサングエ先生の館・・・)
世阿弥が足を踏み入れると、庭一面に咲き誇った薔薇の香りが、世阿弥の鼻をくすぐった。
「どなたですか?」
玄関へ向かう途中、背後から声を掛けられて振り返ると、其処には一人の女性が立っていた。
女性の名はジョイア。この館の主サングエの娘の一人だった。
「私はドルイドの用事で伺った世阿弥と申しますが・・・」
普段、隠者として生活している世阿弥は、初めて見るジョイアの美しさに一気に心を奪われた。
「でしたら、父に御用の方ですね?バトラー、お父様の所へご案内を」
ジョイアは傍に居た執事に世阿弥の案内を頼むと、会釈をした後に、家の裏手へと消えてしまった。