「な・・・何?私何か変な事言った?」
戸惑う絹を余所に、カブキの芝居を何度か観に行った事のある卍丸の両親も、絹の話を聞いて笑いだした。
「絹ちゃん、確かにうちの小僧はカブキさんと違って、そう言う面では安心だ。今日は安心して泊まって行きなさい。」
「そうね、今日はおばさんと一緒に寝ましょ?」
「はい」
絹はそう返事をしながらも、卍丸の父が言った
『そう言う面』
の意味が理解出来ずにいたが、そんな事は初めて卍丸の内に泊まると言う期待感に、何時しか掻き消されていた。
絹が小春と共に昼食の片付けを終えて外に出ると、丁度卍丸が雑貨屋から出てきた所だった。
「あ、絹、丁度迎えに行く所だったんだ」
卍丸がそう言って駆け寄ると、その手には二枚の札と、小さな風呂敷包みが握られていた。
「それ、嵐の護符じゃない?」
「あぁ、巻物は全部カブキが持って行っちゃったからさ。・・・それよりこれから越前まで一緒に来て欲しいんだ」
「今から?」
「俺達火の一族なら、1時間で越前全部回れるだろ?・・・それに、今じゃないと駄目なんだ」
「良いわよ?行きましょ!!」
絹はそう返事をして卍丸の手を握ると、卍丸は護符をちぎって空へ投げ、二人は風となって飛騨を後にした。