「あ・・・マリア・・・」
先程までの陽気な仕草と違い、アイリスはうつろな目でマリアを見つめた。
「・・・アイリス・・・」
マリアは二の句の告げぬままテラスに出て、アイリスの隣に立った。
二人は黙ったまま人の居なくなった銀座の街を眺めていたが、やがてアイリスが静かに口を開いた。
「アイリス・・・今日の公演が終わるまではさくらが主役になった事をそんなに気にしてなかったの・・・ただお兄ちゃんの為に頑張ろうって、その事しか頭に無かった・・・
でも、さっき二人がお外に出かけるのを見たら、急に胸が苦しくなって・・・そして・・・涙が出そうになって・・・」
マリアが屈みこんで手を伸ばすと、アイリスは泣きながらその胸の中へと飛び込んで行った。
「アイリス・・・アイリスが苦しいのは、アイリスが本当の恋をしたからなのよ・・・大神さんの事が本当に好きだから、そんなに苦しいのよ・・・」
「じゃあ・・・マリアも・・・こんなに苦しいの・・・?」
アイリスの髪を撫でながらマリアが言うと、アイリスは切れ切れの声でマリアに質問をした。
次のページ
小説目次(サクラ大戦)
小説総合目次
入口
目次