「ちょっとさくら!何回同じところで間違えれば気が済むの!?」
大神が巴里へ旅立ったあと、稽古中のステージで金切り声を上げたのは、すみれではなく、マリアだった。
「すいません」
素直に頭を下げるさくらに、マリアはイライラと台本を、ステージの真ん中にある椅子に放ると、自分の気持ちを静める様に深い息をついた。
「ごめんなさい・・・ちょっと早いけれど、今日は終わりにしましょう」
マリアはそれだけ言うと、振り向かずに袖へと消えてしまった。
「マリアさんのヒステリーなんて珍しすぎでーす。すみれさんならともかく」
「なんですって!?わたくしのどこがヒステリーだと言うんですの!?」
「ほらほら、それがヒステリーでーす」
「キーッ!!織姫さん!!許しませんことよ!!」
「・・・カンナさんが黙っている時は、織姫さんが一言言うんですね」
さくらが呆れた顔で二人のやりとりを見ている中、カンナが二人の間に割って入った。
「ほらほら、騒ぐとまたマリアのかみなりが落ちるぞ?それより折角早く終わったんだ、たまにはゆっくりしようぜ」
カンナはそう言って皆を去らせた後、椅子の上に置かれたままの台本を手に取った。
そこには、いつもの明るさは無く、思いつめた顔で台本を見つめたまま立ちすくむカンナの姿があった。
「マリアはテラスよ?」
その言葉に、カンナがハッと顔を上げると、袖からかえでが舞台へと入っていった。
「かえでさんは、何でもお見通しだな。・・・行ってくるよ」
カンナが苦笑を漏らしつつ舞台を降りると、今度はかえでが小さなため息をついた。
「恋せよ乙女か・・・」
かえではそう呟くと、舞台の電気を消して、支配人室へと向かった。
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