ヤフキエルの脅威が去り、海神別荘の上演を控えるばかりとなったラチェットは、食堂に面する廊下から、呆然と中庭を眺めていた。
「あら、どうしたの?そんなに驚いた顔をして」
突き当たりの事務所から出てきたマリアが丁度唖然としたラチェットを目撃し声をかけると、ラチェットはいつもの微笑を含んだ表情に戻っていた。
「マリアさん・・・いえ、先程からレニがアイリスと昼寝をしているのですが、さくらさんが毛布をかけても、気付く様子すらないのに、少し驚きまして」
一旦体をマリアの方に向けてそう言った後、ラチェットは再び中庭を見つめた。
「レニは、随分堕落してしまったみたい・・・」
「そうかしら?」
ラチェットの呟きを聞き逃さなかったマリアは、少しムッとした様子で、ラチェットの隣に立ち、日当たりの良いベンチで眠っている二人を見た。
「レニは、大神隊長と会って変わったわ、それは私も同じ・・・私もレニも、大神隊長に出会う前までは、人を信頼する事を知らなかった・・・」
「過剰な信頼は、ミスを招くわ」
「・・・だとしても、私達は仲間を殺すなんて真似は出来ない」
「あの時は、織姫を攻撃するのが一番合理的じゃないの?その時もレニが信頼なんてくだらない感情で負傷したのだし、話にならないわ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「はいはいはい、こんな所で大の大人が喧嘩しない!」
二人が同時に向き合い、冷たい火花がぶつかるのとほぼ同時に、食堂から出てきたカンナが間に入った。
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