因幡の花嫁(天外魔境2) |
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ここは平和を取り戻した因幡の国、桜の舞い散る中、酒を酌み交わすのは、卍丸一行と、百々地三姉妹、そして、復活した千代の8人であった。
「そういえばさ、お前らこの国では、かなり派手な事やらかしたらしいな」
ほろ酔いになったカブキがニヤニヤしながら三人を見ると、卍丸と絹の二人は苦虫を噛み潰した顔で、互いの顔を見あい、極楽は誇らしげに千代の顔を見た。
「いやぁ、わしの考えた作戦なんじゃが、あれは素晴らしかった。特にわしの変装には、皆感心の眼で見ておったからな」
「私たちも因幡の作戦の時は、既に出雲へ向かっていたので、詳しい事は知らないんですよ、後学の為にも、お聞かせいただけますか?」
花見の席にふさわしく、桜柄の小紋を着てで参加していた花火が口を開くと、極楽は嬉しそうに馬鹿野城攻略の話を始めた。
話が進むにつれ、卍丸と絹の顔は段々と真っ赤になりうつむき、カブキとまつりは大声で笑い始め、みこしと花火と千代は唖然とした顔で極楽を見た。
「そ・・・それで、本当に気付かれなかったんですか?」
みこしは信じられないと言った顔で極楽を見ると、極楽は満面の笑みを浮かべて、それに答えた。
「当然じゃ!何といってもこいつらみたいなガキと違って、大人の色気という物があるからのぉ」
そう言って楽しそうに笑う極楽と、恥ずかしさで穴があったら入りたいと言った様子の卍丸と絹をみながら、カブキは更に大声で笑った。
「な・・・なぁ、そんなに色っぽいなら、是非俺様達にも見せてくれよ、丁度因幡に来てるんだし」
カブキが笑いを必死に押さえつけて言うと、極楽はポンと両手を叩いた。
「おぉ!それは良い考えじゃ!わしも千代さんにあの晴れ姿を一目見せたかったからのぉ」
「それだけはやめてー!」
極楽の一言に、卍丸と絹が同時に声を上げた。
「何故じゃ、良いじゃないか、減るもんじゃなし」
その時、卍丸の首に、いきなり腕がからみついた。
「卍丸・・・まつりさんのお願いが聞けないってのかい?ん?」
すっかり出来上がったまつりは、着てきた梅柄の小紋の袖をたくし上げると、卍丸の首に回し、締め上げ始めた。
「花火姉ちゃん、止めないの!?」
「・・・もう少し様子を見ましょう。・・・実は私も卍丸様の花嫁姿には興味あるし」
桃柄の小紋を着て、花火の隣に座っていたみこしが声をかけると、花火はそう言って、残った酒に口をつけた。
「さ、卍丸がまつりに殺される前に、行くとするか」
極楽はそう言ったあと、手早く荷物を片付けると、皆の中心に立ち、風の護符をかかげ、一行は鹿野村へと向かった。
「これはこれは勇者様、良くいらして下さいました」
突然の来訪にも関わらず、快く歓迎してくれた長老に事の顛末を話すと、長老もまた、卍丸達と同じ反応を見せたが、それがまた、カブキ達の好奇心に火を点けた。
「そこまで言うなら、なおさら見たいじゃねぇか!見せろこらぁ!」
そう言ってカブキが掴み掛かろうとするのを、卍丸が必死で止めた。
「解ったよ、着るから、村の人に迷惑かけるな」
卍丸の一言に、カブキがようやく手を離すと卍丸は長老の方へと向き直った。
「・・・すいません、もう一度やってもらえますか?」
力なく言った卍丸を哀れに思ったのか、長老はそれ以上何も言わずに、しまっておいた衣装を出し、村の女衆を呼び出した。
外で待たされていたカブキたちが、村の中を散策してると、長老の家から、5人を呼ぶ声が聞こえた。
戻った5人は、3人の姿を見て唖然とした。
「これは・・・」
「・・・」
「卍丸様、やはりお似合いです」
「花火姉ちゃん、そういう問題じゃない」
「・・・これは・・・卍丸が嫌がった訳だ・・・」
まつりが言い終えるのとほぼ同時に、全員の視線が、無言で極楽を凝視する千代に集中した。
「どうじゃ千代さん、なかなかに美しいじゃろ」
白粉で顔を真っ白にした極楽がにんまりと笑うと、千代は引きつった笑みを浮かべた。
それから数日後、皆の元へ、極楽から手紙が届いた。
内容は、千代が自分の美しさに嫉妬し、吉備のいろは宮へ帰ってしまったと言った物であった。
手紙を読み終わった全員が、同時に深いため息をついたのは、言うまでもない。
おわり
■あとがき■
はぁ・・・やっと終わりました。と言うか、大変お待たせ致しました(T_T)
今回は、カブキが居なかった時の話をカブキにすると言うリクでしたので、思いっきりギャグに走ったつもりですがいかがでしたでしょうか?
今、天外3で更新をサボリまくりだったので、ゲームを進めつつ、小説も頑張りたいと思います♪