あじさいの唄(卍丸×絹) |
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「おぉ、カブキ、卍丸と絹の二人はどうした?」
安芸で白銀城を陥落した翌日、いつもより遅めに起きた極楽は、卍丸と絹の姿が見えない事に気付き、部屋の窓から退屈そうに外を見つめるカブキに声を掛けた。
「あの二人なら、朝から絹の武器を買いに行ったきりだぜ?」
カブキが振り向きもせずに答えると、極楽は布団の上に座り込んで、昨日の事を思い出していた。
鬼の力を発動し、吹雪御前を亡き者にした絹・・・
自害するつもりの絹を救いに命がけで崩落寸前の白銀城に飛び込んで行ったカブキ・・・
そして、自分たちの説得にも頑として応じなかった絹の心を動かした卍丸。
極楽は、最初、この面々では根の一族との戦いなどとても無理なのではないかと内心不安で仕方無かったが、皆の心が一つになり、暗黒ランが残り一本となった今、不安は確固たる信頼へと、その姿を変えていた。
「お前さんは出かけないのか?安芸も今日の夜には出発するんだろうが?」
「さすがの俺様も、昨日の今日で女を口説く元気なんて出ねぇよ」
カブキはそう言うと、窓に肘を預けて、うんざりと振り返った。
「・・・此処まで長かったもんな」
「あぁ、俺様もまさかこんなに長いことてめぇらに付き合うなんて思ってもいなかったぜ」
カブキはそう言いつつも、その顔はどこか晴れ晴れとしていた。
「卍丸か・・・不思議な男だ」
「本当だよな、最初会った時は、たたの小汚ぇガキだったのによ」
「・・・そんな小汚いガキに、俺たちは何時の間にか命を賭けてるんだもんな」
「絹もそうだったな・・・最初は何時倒れちまうじゃねぇかと、心配で仕方無かったぜ」
「おぅ、俺様は、戻ってきたらいきなりやたらデカイのと可愛いのが居て内心たまげたぜ。けどよ、やっぱり1番驚いたのは、あの鎖だよな」
「・・・事情を知っちまった今なら、納得出来るけどな」
「まぁな、けど、俺様は今の絹の方が元気があって好きだぜ。やっぱり女は元気じゃねぇとな」
「お?珍しく意見があったな」
二人はそう言うと、互いの顔を見て、苦笑を洩らした。
「そう言えば、絹は結局、色男のお前さんにとうとうなびかなかったな」
「けっ、来た所で子供は相手にしねぇんだよ」
「あら、私って、そんなに子供に見えますか?」
カブキが悔し紛れの悪態をついた所で、部屋の襖が開き、細身の剣を抱えた絹が、不服そうに頬を膨らませて帰ってきた。
「げっ!絹・・・何時の間に・・・」
「・・・預かり所に骨の剣を預けていたのを卍丸が思い出して、取りに行って来ただけです。」
絹はムッとしたまま部屋の真ん中へ座り、後から付いてきた卍丸も隣に座った。
「や・・・あれは、つい口から出たでまかせでな、本当は・・・」
珍しく慌てふためくカブキを見て、絹は楽しそうにコロコロと笑った。
「絹が笑った・・・」
卍丸が絹を見て、驚いた様に口を開くと、後ろから極楽のげんこつがとんだ。
「当たり前だろ、絹だって感情位あるわ、馬鹿!」
そのやりとりを見て、更に笑い声を上げる絹につられる様に、部屋中に皆の笑い声が響き渡った。
―終わり―
■あとがき■
お待たせしました。
今回は書き始めるまでは非常に長かったのですが、書いてみたら、ビックリする程すんなりと書けました。
リクエストは
「白銀城攻略後の卍丸と絹」
と言うリクエストでしたので、あえて二人の出番を減らして、極楽とカブキに二人の事を語ってもらいました。
私から見て、極楽にとって、カブキも含めた3人は、自分の子供の様に見えていたのではないかと感じ、同様に、カブキは二人の兄の様な存在だった様な気がしたので、この様な作品となりました。