スローモーション

(ゾロ×ルフィ)


春島の海域をゆったりと進むメリー号に、一艘の小船が近づいてきたのは、昼にほど近い時間だった。
「エース!」
船上の人物にルフィが気付くと、すぐに大声を上げ、甲板から身を乗り出した。
「追われてるんだ、少しの間かくまってくれ」
手を伸ばしてエースを引き上げた後、エースはそう言って甲板に腰を下ろした。
「追われてるって、何故だ?」
「あー、食い逃げしたんだが、相手がしつこくてよ、海まで追いかけてきたから必死で逃げて、やっと巻いたと思った矢先に、お前らの船の見えたもんでな」
「・・・食い逃げかよ」
船の引き上げを手伝ったルフィとウソップが揃って突っ込むと、エースはカラカラと笑い声を上げた。
「なぁなぁ、そんな事より、旅の話聞かせてくれよ!」
ウソップと共に冒険談を楽しみにするルフィを横目で見ながら、ゾロは薄目を開けてエースの姿を追った。
エースはウソップとルフィと後から参加してきた船員達と共に楽しそうに話を始め、夕方まで甲板で賑わっていたが、夕方になり、皆がバラバラに行動を始めると、ルフィはエースを伴い、見張り台へと上がっていった。
縄梯子を上っていくルフィの思いつめた様な顔に、ゾロはエースに対して、言い様の無い感情を覚えたが、何事も無かった様に食堂へと姿を消した。
食事の時間になった頃、二人も食堂へ降りてきたが、ルフィはやや上気した顔で、ゾロと目が合った途端、赤くなって目をそらした。
その態度にカッとなったゾロは、夕食を食べ終えるとさっさと食堂を後にし、一人見張り台へと上がっていった。

そして、そのまま深夜を迎えた船では、ゾロが見張りをしながらも、怒りを抑えきれずにいた。
そんな中、縄梯子のきしむ音がゾロの耳に入ってきた。
「!?」
「こんばんは、少し良いか?」
上がって来たのは、エースだった。
「・・・」
「・・・」
二人は暫く視線も合わさずに座り込んでいたが、沈黙を破ったのは、エースの方だった。
「・・あんた、どうして昼間に俺を見てた?」
「・・・気付いてたのか」
「あれだけ殺気立った目で見られたら、誰だって気付くだろ」
そう言って苦笑を浮かべたエースを、ゾロは再び殺気立った目で見た。
「・・・ルフィに惚れてるのか?」
「!!!?」
その問いに対し、ゾロの背中に戦慄が走った。
「ど・・・どうして・・・」
「どうしてって聞かれても困るけどな・・・なんとなくそう思ったんだ」
「・・・」
ゾロは何も言えないまま俯いてしまった。
「伝えたらどうだ?」
「・・・そんな事、言えるわけ無いだろ」
「じゃあ、あいつが誰かと仲良く話す度に相手を睨むだけなのか?」
「・・・くっ」
「あいつは、意外に恋愛に対して臆病でね、相手の気持ちが解るまでは動かないんだ・・・困ったもんだよ。それで自分の気持ちに整理が付かなくなって、偶然来た俺に泣きついてきやがった」
「!?」
「気付いてくれた様で良かった」
ゾロの驚いた顔を見て、エースが苦笑を洩らすと、ゾロは嬉しさと恥ずかしさが入り混じり、みるみる真っ赤になっていった。
「あいつを、頼むよ」
そう言い残して、エースは下へと降りていった。
朝になり、皆はエースの居ないことに気付いた。
サンジによると、朝早くに出て行ったらしい。
ルフィはさほど驚く様子も無く、船は近くの島へと上陸した。

皆はルフィとゾロを残して食料探しに出かけ、ルフィはまだ水の冷たい海岸で波と戯れ、ゾロは船からその様子を眩しそうに眺めていた。
その時、春特有の強風が、ルフィの帽子を羽飛ばした。
「あ・・・帽子・・・」
ゾロと出逢った頃と同じ様に、ゾロが帽子を掴むと、ルフィが船の下へとやってきた。
「ありがとう・・・」
前とは明らかに違うルフィの視線に、ゾロは心臓が破裂しそうな程にドキドキしながら、帽子を差し出すと、ルフィの手が伸びて、帽子を掴んだ。
それと同時に、突然船から伸びた二つの手が、ルフィの体を上に持ち上げた。
反動がついて飛び上がったルフィの体をゾロが慌ててキャッチすると、不意に二人の視線がぶつかった。
「ゾ・・・ゾロ・・・あのさ・・・俺・・・」
両脇を抱えられたまま、ルフィが真っ赤になって口を開き始めると、ゾロはルフィを甲板におろした後、両手でルフィの頬を包みこんだ。
「ずっと好きだった・・・」
ゾロはそう言い終えると、そのままルフィの唇と重なった。

「・・・やっとくっついたか。あいつら、何かにつけて2人っきりにしてやってるのに、ちっとも進展しないから、周りがイライラしちまうぜ」
船からさほど離れていない場所から二人の様子を見ていたウソップがホッとした様子でため息をつくと、ロビンがクスクスと笑い出した。
「しっかし、さすがロビンちゃん♪ちゃんとフォローしてあげるなんて、俺は惚れ直しちゃったぁ♪」
「・・・あいつら、本当に変なところだけは、異常に行動遅いわよね。今だってロビンの手助けがなかったら、まだ何も言わないまま終わってたんじゃないの?」
半ば呆れた様子でサンジと船の上の二人を交互に見たナミは、ウソップと同じ様にホッと息をついた。
「人間って、結構ややこしい生き物なのな」
「そうね、でも、これでルフィのお兄さんも一安心なんじゃないかしら?」
静かに皆のやりとりを聞いていたチョッパーが口を挟むと、ロビンはそう言って、チョッパーの頭を撫でた。
「さ、これ以上覗くのはヤボってものよ、行きましょう」
ロビンの一言で、皆は食料を探しに、船を後にした。

―おしまい―

■あとがき■
えー、まずは、やんこちゃん、一ヶ月以上遅れましたが、お誕生日おめでとうございます♪
今年一年も素晴らしい年になる事を、心よりお祈りいたします。
で、肝心のお話ですが・・・今回は恋愛より友情に重点を置きたかったので、皆で二人を手助けすると言った形をとってみましたが、上手く伝わったでしょうかねぇ?
タイトルに関しては、まんまですね(^_^.)
意味はナミちゃんが言った通りです(^_^.)
まぁ、たまには超オクテな二人も良いかなと思って書いてみたのですが、喜んでいただければ幸いです。




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