守ってあげたい

(スモーカー×ゾロ)


その日のスモーカーは、早めの昼食を済ませ、いつになく上機嫌で机に向かっていた。
机の傍らには、今、世界中で流行っていると言うカードゲームのカードが一枚。
カードに描かれているのは、これから会う予定のロロノア・ゾロ。
今日は、彼の誕生日だと、先日知ったばかりのスモーカーであった。
数日分の仕事を一気に片付けたスモーカーは、必要な書類だけを鞄に詰め込んだ後、浮き足立つ気持ちを抑えつつ、船を後にし、一人街へと向かった。
商店街に入り、プレゼントに迷う。
約束は夜。それまでに、ゾロの気に入りそうな品物を選ばなければいけない。
スモーカーはここ何年も経験した事のなかったワクワクした気持ちになりつつ、色々な店を見て回った。

同じ頃、予定より早めに上陸したルフィ一行は、必要物資の調達の為、街に向かっていた。
街場では、各自解散し、各々が求める品物の向かったのだが、酒屋に向かったサンジは、見覚えのある背中に、背筋が凍りついた。
(あれ・・・スモーカーじゃねぇか・・・)
二人の関係を知らないサンジは、危機感に煽られ、顔を真っ青にしつつ、気配に気付かれない様に、店から離れ、町中に散らばった仲間達を探し求めた。
そして、事情も話さぬまま、全員を船に呼び戻した後、真っ青な顔のまま、先程の出来事を語った。
「スモーカーに会った!?」
ナミの一言に、ゾロの肩がピクリと動いた。
二人の関係を唯一知っていたナミは、一瞬ゾロの顔を見た後、顎に手をかけて、悩む仕草を見せた。
「・・・スモーカーの船と同じ島に止まったのは、今回だけじゃないわ」
堅い表情のまま口を開いたのは、ロビンだった。
「なんだって!?じゃあ、ずっとつけられてたってのかよ!?」
「いえ、気付いていたなら、とっくに拿捕されていた筈。偶然とは思うけど、用心に越した事は無いわ」
ロビンとサンジの会話にゾロの顔はみるみる青くなっていくのに気付いたチョッパーは、ゾロの元に駆け寄った。
「どうした!?大丈夫か?」
「・・・大丈夫だ」
ゾロは短く答えると、首を横に振った。
「・・・ナミ、お前時々航路変えるよな。エターナルポース持って・・・今回も確かそうだったと思うが・・・」
ウソップの一言に、ゾロ以外の視線がナミに集中した。
ゾロは、黙ったまま拳を握り締め、歯を食いしばった。
「お前・・・まさか・・・」
「ちょ・・・ちょっと待ってよ、そんなんじゃないって、ただ・・・」
「ただ?」
「・・・・・・・・・」
「・・・俺のためだ」
「!?・・・ゾロのため!?」
「・・・俺が海軍の・・・」
「そうよ!ゾロが海軍の人と恋仲になったからちょっと寄り道してるだけよ!いけない!?」
スモーカーの名を出すのを静止する様にナミが大声を張り上げ、ゾロを庇うように前に立った。
「・・・それはちょっといただけないわね」
皆が唖然とする中、口を開いたのはロビンだった。
「な・・・」
「理由が聞きたい?敵対するもの同士が恋に堕ちて、その後どうなるの?両方が破滅して終わりじゃない」
いつになく厳しい口調のロビンに、ナミが返答も出来ずに黙り込むと、今度はゾロがナミを押しのける形となって前に出た。
「俺か奴が敵側に回るとでも言いたいのかよ、だったらなぜナミが皆に言わなかったと思ってるんだ!」
「恋愛経験が少ないからでしょ?恋愛なんて、そんなに甘いもんじゃない」
「奴は俺を利用しようなんて思ってないし、俺だってそんな事は露ほども思ってねぇよ!」
「それは貴方の言い分でしょ!?海軍の連中なんて・・・!?」
ゾロが手を上げかけたのをサンジが止めたにも関わらず、頬を叩く軽い音が、船内に響いた。
「お前!ゾロに謝れ!!」
ロビンの目に映ったのは、怒りで顔を真っ赤にしたルフィだった。
「船長さん・・・?」
「俺はあいつらの事、お前なんかよりずっと前から知ってるんだ!あいつらはゾロを利用なんかしねぇ!ゾロの事が好きで、そいつをゾロが好きなら、それで良いじゃねぇか!」
「ルフィ・・・」
同じく驚きでゾロが目を丸くしたままルフィを見ると、ルフィはいつもと変わらぬ笑みを、ゾロへと向けた。
「相手が誰かは知らねぇけど、本当に好きなんだろ?」
「うっ・・・」
いきなりのストレートな質問に、ゾロは真っ赤になって、首を縦に振った。
「ロビン」
キョトンとしたまま叩かれた頬を押さえていたロビンがルフィを見ると、また同じ笑みを、ロビンに向けた。
「大丈夫だよ、もし裏切ったとしてもさ、その時は逃げれば良いだけだろ?」
ルフィの屈託の無い一言に、ロビンは面を伏せた。
「あー・・・その・・・悪かったな、俺のために」
ゾロがロビンに頭を下げると、ロビンは面を伏せたまま、首を横に振った。
「信じてるのね・・・互いを」
「あぁ!そうじゃなかったら、一緒に航海なんて出来ねぇよ」
ルフィの言葉に、皆は誇りに満ちた笑顔で応えた。
「・・・ところで、誰なんだ?てめぇみてぇなマリモ頭に惚れるなんて慈善家は?」
「だ!誰だって良いだろ!うるせぇな!!」
サンジがゾロの顔を覗き込む様に聞くと、ゾロは真っ赤になって顔を背けた。
「良いじゃんか、ここまでバレてるんだからよぉ」
「恋かぁ・・・どんな気持ちになるんだろう」
悪乗りしたウソップとサンジ、純粋に恋と言う感情に興味があるチョッパーに囲まれ。
このままだと、待ち合わせの場所まで付いてくるのではと、真っ青になりながら後ずさるゾロにピッタリと張り付いていた3人が、突如無数に伸びた手に引き離された。
「ふふっ、野暮な事しちゃダメよ」
しりもちをついた三人が後ろを振り返ると、そこには、ふっきれた様な笑みを浮かべるロビンの姿があった。
「ロビン・・・」
「・・・行ってらっしゃい」
ロビンが複雑な表情をゾロに向けると、ゾロは素直に笑って、船を飛び降り、街の方へ駆け出していった。

夕暮れが空を包み、ゾロがスモーカーとの再会を果たした頃、甲板には、ナミとロビンの姿があった。
「・・・貴女達、どうしてそこまで仲間を信じられるの?」
その問いに対し、ナミは苦笑をもらしつつ、手すりに背中を預けた。
「私もね、最初はあいつらの事を全然信用なんてしてなかった。多分、他の連中も最初はそうだったと思うわ。・・・でもね、ルフィは、最初から私たちを信用していたの。裏切るなんて事は、考えた事も無いんじゃない?
それに、あいつは、私たちの大事にしたい物を守ってくれた。
それは多分、これからもずっと・・・
だからあいつは、ゾロの大切にしている人をも守りたいのよ。
それが、たとえ敵であってもね」
「・・・そう」
返事をしたロビンは、ナミの隣に立ち、同じように手すりに背を預けた。
「・・・本当の恋をした事が無いのは・・・私なのかもしれないわね・・・」
自潮気味に笑うロビンを見た後、ナミは上を向いて赤く染まった空を見上げた。
「良いじゃない、中途半端な恋だって、経験値になると思うし・・・って、私もまだ、ロクな恋をしたことが無いお子様だけどね」
「そうね・・・早いか遅いかの差だけよね・・・」
二人は、暮れ行く空を、いつまでも眺めていた。

同じ頃、二人は街の洋服屋で新調したスーツを着て、小高い丘の上に建つ、高級そうなホテルの中にあるレストランに来ていた。
「う・・・何か・・・緊張するな・・・」
個室に通され、落ち着かない様子のゾロの様子を楽しむ様に、スモーカーは、ゆっくりと葉巻を燻らした。
「何を今更・・・」
「あ・・・いや、どうもこういう場所は、何度来ても慣れなくて・・・」
サンジがしつこくテーブルマナーを叩き込んだので、恥をかくことは無かったのだが、豪華な食事と落ち着いた雰囲気に圧倒され、食事の味も解らぬ程に緊張してしまっていた。
「・・・少し外に出るか」
スモーカーはそう言うと、ゾロを伴って、テラスへと出た。
「誕生日だったよな・・・かなり遅れたが」
そう言って胸ポケットから差し出したのは、一枚の写真だった。
「その服と、これは、俺からのプレゼントだ」
「・・・」
驚きで呆然としていたゾロは、写真を受け取った直後、スモーカーに抱きついた。
「俺、これ、絶対なくさないから、大事にするからな!」
そこには、私服に身を包んだスモーカーと、ゾロに対する気持ちが綴られていた。

■終わり■
どうもご無沙汰でございました。
本当はもっとラブラブな誕生日物にするつもりだったのですが、何だか友情物になっちまいました(^_^.)
おまけに誕生日を大幅に過ぎてるし・・・(ーー.)
でも、久々に楽しい時間を過ごせて良かったと思いつつ、また不定期更新にお付き合いいただければと思っております(^_^.)


■あとがき■




Copyright(C)青海物語