TROUBLE MAKER'S(スモーカー・たしぎ) |
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これは、ルフィ達がロビンを迎え入れたばかりの頃のお話。
補給先の駐屯地で、中庭の見える部屋の窓から中庭を見ているのは、海軍大佐のスモーカーだった。
海兵達に稽古をつけているたしぎを見ながら、先日のたしぎの事を考えていた。
アラバスタでの一件から、わずかながらに剣のキレが悪い事に気付いてはいるが、それを口に出す事が出来ずにただぼんやりとたしぎを見ていたその時、不意に背後から人の声がした。
「まるで、娘の成長を見守るお父さんだな」
その声にスモーカーが振り返ると、そこには懐かしい顔があった。
「来てくれたのか・・・」
「よっ!」
声を掛けた人物は、まだ若そうな女性将校であった。
「久しぶりだな」
「んー、10年ぶりってところか?・・・あぁ、あの娘が例の話の娘ね」
女はそう言いながら、視線は木刀を振るうたしぎに向けられていた。
「ニコ・ロビンにやられてからずっとあの調子でな、・・・俺にはどうして良いやら・・・」
「・・・なるほどね」
溜息交じりなスモーカーの言葉に、女は納得した様に頷くと、着ていたコートと上着を脱いで、スモーカーへと手渡した。
「良いよな?」
「いや・・・今のあいつにお前の相手は無理だ」
「だからこそ私を呼んだんだろ?」
女はニヤリと笑うと近くにあった木刀を手に、中庭へと入っていった。
完全に気配を消し、たしぎに近づく女のその姿は、先程とはまるで別人の様だった。
「曲者!!」
女が木刀をたしぎの頭に振り下ろした瞬間、木のぶつかり合う乾いた音と共に、女と振り向いたたしぎの木刀が交差した。
「へぇ・・・思ったよりやるじゃない」
「・・・貴女は・・・」
たしぎが思わず手の力を緩めた瞬間、たしぎの頭に木刀の先端が軽く当たった。
「うふふ、ごめんね」
先程の部屋に移動した女は、同行したたしぎに向かい、笑いながら謝った。
「いえ・・・、その、憧れのルリ大佐と剣を交えられるとは思わなかったですから・・・」
たしぎはむしろ叩かれた事が嬉しい様に自分の頭を触った。
「あら、貴女が気にしているのはこれだけかと思っていたけど、嬉しい事言ってくれるのね」
女はそう言うと、足元に立てかけてあった一振りの刀をたしぎの前に差し出した。
「それは・・・大業物国綱!!・・・凄い・・・」
たしぎは差し出された刀を受け取ると、まるで初恋の相手にでも会うような顔で鞘から刀を抜いた。
「凄い・・・感激です・・・」
たしぎはうっとりと刀を見つめた後、夢見心地で刀を女へ返した。
「でも、スモーカー大佐とルリ大佐がお知り合いだなんて知りませんでした」
「こう見えても同期なのよ。でも顔を合わせたのは10年ぶりなのよね」
「え?じゃあ、私お邪魔なんじゃあ・・・」
たしぎが慌てて立ち上がろうとすると、それより先にスモーカーが席を立った。
「少し出て来る。その間、お前はこいつの相手をしてろ」
そう言い残すと、スモーカーはさっさと部屋を出て行ってしまった。
「あいつも相変わらず我儘みたいね・・・」
女はそう言うと煙草に火を点け、大きく息を吸い込んだ後、たしぎを見た。
「で?なんで貴女は私の事を知ってたの?」
「え・・・?だって有名ですよ。海軍情報部のルリ大佐は、軍の全女性剣士のなかでは一番だって」
「そうなの?・・・私なんてまだまだだと思うけどね」
女はそう言って苦笑した後、母親の様な目でたしぎを見つめた。
「ねぇ、なんで私が今日此処に来たか解かる?」
「スモーカー大佐に御用があったのではないのですか?」
「はずれ。私がスモーカーに呼び出されたのよ、貴女の事でね」
「私の事で?」
キョトンとするたしぎを見て、女はニッコリと笑った。
「あいつさ、貴女が女にやられた事で落ち込んでいるから元気付けてやってくれって、わざわざ私に電話掛けてきたのよ。あの我儘男が頭まで下げてさ」
「え・・・?」
その一言を聞いた瞬間、たしぎの顔から笑みが消えた。
「あいつ・・・ううん、私達にとって貴女達は最初から自分で育てている部下だから、ある意味特別なのよね。あいつにとって貴女は娘みたいなものだから、本当に大事にしたいんじゃないかしら?」
女はそう言うと、立ち上がって窓際へと移動した。
「いい上司に恵まれたじゃない」
たしぎに背を向けたまま言うと、背中越しにたしぎのすすり泣きの声が聞こえた。
「貴女も男には弱味を見せないクチか・・・」
その一言を聞いた途端、たしぎは大声で泣き始めた。
「女はね・・・泣いた数だけ強くなれるものだから、今のうちにいっぱい泣いておきなさい」
女がたしぎに近づくと、たしぎの方から抱きついて泣き続けた。
「あ!すいません」
落ち着きを取り戻したたしぎは、女のシャツが涙でびっしょりと濡れている事に気付き、慌てて持っていたタオルで女のシャツを拭き始めた。
「いいわよ、すぐ乾くから。・・・それより何か飲み物くれない?喉渇いちゃった」
「あ、はい!今すぐお持ちします!!」
たしぎはそう言うと、鉄砲玉の様に部屋を飛び出して行った。
「・・・入っていいよ」
たしぎが階下へ下りて行ったのを確認した後で、女は隣の部屋へ続くドアに向かって声を掛けた。
「悪かったな」
ドアが開き、入ってきた人物はスモーカーだった。
「別に?どうせ仕事のついでだったしね」
そう言いながら、女はソファーに掛けられた上着とコートに袖を通した。
「行くのか?」
「言っただろ?仕事のついでだって。それに、あの娘はもう心配いらないよ」
女はそう言うと、スモーカーの肩を軽く叩いた。
「いい娘じゃない、大事にしなよ。じゃあ・・・、またな」
女はそう言い残すと、文字通り風の様に姿を消した。
「お待たせしました!!」
たしぎがコーヒーの入ったトレーを持って部屋へ入ると、そこにはスモーカーの姿のみがあった。
「あれ?・・・ルリさん?」
たしぎはスモーカーには目もくれずに室内を見回した。
「ルリならもう帰ったぞ」
スモーカーは、窓から外を見たまま、振り向きもせずに答えた。
「あ・・・、スモーカーさん。居たんですか」
その物言いに、スモーカーはムッとしたが、黙ってたしぎの持ってきたカップを一個手に取った。
「用事は済んだか?」
「あ、はい」
「だったらさっさと仕事に戻れ!!」
「はっ、はい!!」
スモーカーにいきなり怒鳴られ、たしぎは慌ててドアの方へ駆けて行った。
「あの・・・スモーカーさん・・・」
一度閉まりかけたドアの隙間から、たしぎがそっと顔を出した。
「何だ」
「・・・ありがとう御座いました」
たしぎは真っ赤になってそう言うと、ドアを勢い良く閉め、そのまま階下へと消えていった。
残されたスモーカーも、真っ赤になりながら手にしたコーヒーを一気に飲み干した。
その後、ルリ宛にスモーカーからシルクのシャツが送られたらしい。
―END―
―あとがき―
うわー、今回の話はマジきつかったです。上司と部下物で、なおかつ恋愛感情無しとのリクエストでしたので、あえてオリジナルな人物を登場させてみました。
本当はヒナ嬢にしようかと思ったんですけど、どうもあの二人は恋のライバルみたいな感じがしたので、あえて女性で、たしぎの尊敬しそうな人物というのを考えました。
ちなみにルリという名前は当然鳥の名ですよ。(笑)
おまけを言えば、ルリさんには性格と外見のモデルになった人物がそれぞれいますが、言っても解からないと思うので秘密にしておきます。
あと、刀の正式名称は粟田口国綱って言います。この名前にピンときた人は是非お友達になって下さい!!
こんな駄文でよろしければ、のし付きで差し上げますので、受け取ってくだせぇ。