LOVE LETTERS

(ウソップ・ロビン)


航海中のゴーイングメリー号に、一羽の伝書カモメが飛来し、手紙を甲板に居たロビンに渡すと、何処かへ飛んで行ってしまった。

「狙撃主さん、お手紙が来てるわよ」
ロビンは船室へ入ると、みかん箱を改造して作った
「ウソップ工房」
で、新兵器の開発をしているウソップに声を掛けた。
「お?サンキュー」
ウソップはすぐさま手を止めると、ロビンから手紙を受け取った。
「彼女から?」
「ば・・・馬鹿言うなよ、・・・そんなんじゃないって・・・」
差出人の名前を見たロビンの素直な質問に、ウソップは真っ赤になって否定した。
「あら、そんなにはっきり否定しちゃって良いの?」
奥で海図を書いていたナミが意地悪な視線をウソップに向けると、ウソップは考え込む様に顎に手を掛けた。
「・・・カヤは、俺の親友で・・・この船を貸してくれた大事な人で・・・」
「はいはい、私が悪かったわ」
ウソップがカヤの話を始めると止まらなくなる事を熟知しているナミは、うんざりした様子で謝ると、再び海図へ目をやった。
ウソップもまた気を取り直して食堂の椅子に座って改めて封筒に目をやり、中身を傷つけない様に丁寧に封を開けて手紙を取り出すと、便箋の端から一枚の紙が床に落ちた。
「・・・可愛い人ね」
落ちた紙を拾ったロビンがウソップに返したそれは、カヤと旧ウソップ海賊団の子供達の写った写真だった。
「何?可愛い・・・?」
厨房に立ち昼食の仕度をしていたサンジの耳が、ロビンの
「可愛い」
と言う一言に反応し、一瞬の内にウソップから写真を奪い取った。
「・・・本当に麗しの美少女だった」
サンジは信じられないと言った様子でウソップを見た後、嬉しそうに手紙を読むウソップの胸倉に掴み掛かった。
「何すんだよ!?サンジ!!」
「何でてめぇにこんな可愛い彼女が居て、俺には居ねぇんだよ?あぁん?」
「んな事知るか!!それに彼女じゃなくてカヤは親友だ!!」
ウソップは逆ギレしたサンジから強引に写真を奪い返すと、手紙を持って甲板へ出て行った。

「ふぅ・・・」
ミカン畑に腰を下ろしたウソップは、サンジの居ない事を確認した後で、改めて手紙に目を通した。
船内で唯一の彼女持ちのウソップは、こうしてカヤとの手紙のやりとりをするのが何よりの楽しみであり、彼女の気持ちを確かめていられる唯一の手段だった。
書いてある内容は、村の様子や自分の勉強の事などで、会いたいとか、寂しいと言う語句は一回も見た事は無かった。
その語句を入れないのが、待ち続けると誓ったカヤの気持ちの表れであり、彼女の意思なのだろうが、女心を理解し得ないウソップにとっては、少し寂しい物を感じていた。

「狙撃主さん、ご飯よ」
ウソップがその声に顔を上げると、ロビンが階段を上がって来た。
「・・・なぁ、聞いて良いかな」
「何を?」
「女ってのは、寂しいって感じないのか?・・・例えば、友達に会えない時とかに・・・」
寂しそうな顔のウソップを見たロビンは微かに微笑んだ。
「・・・難しい質問ね」
ロビンは少し考え込む仕草をした後にゆっくりと口を開いた。
「じゃあ、貴方はその人に寂しい時に寂しいって手紙に書いた事があって?」
「無ぇよ。そんな事したらあいつが心配しちまうから・・・」
「だったらその人も同じなんじゃなくて?」
「でも俺は男だけど、あいつは女なんだから弱味を見せたって俺は・・・」
「・・・ただのお友達に弱味を見せる女はそう居ないわよ?」
ロビンの一言が、ウソップの胸に深く突き刺さった。
「貴方が彼女を『親友』と言い続ける限りは、彼女も決して本心は明かさないわ」
「・・・」
「面と向かって言えない事でも、手紙にすると素直に言えたりする物よ?」
「・・・少し、考えてみるよ」
ウソップはそう言って階下へと降りて行った。

夜中、ウソップは夢を見た。
そこにはカヤと見知らぬ男が立っていて、ウエディングドレスに身を包んだカヤが悲しげな瞳でウソップを見詰めている。
「さよなら」
声にならない声がウソップの脳裏に響くと、カヤは隣に居た男と誓いの口づけを交わす寸前で、ウソップは飛び起きた。
顔は真っ青となり、全身は冷汗でびっしょりと濡れていた。
「・・・夢?」
ウソップは、乾いた喉を潤すべく厨房へ向かった。
「・・・狙撃主さん?」
明かりの点いた厨房に入ると、其処にはコーヒーを煎れるロビンの姿があった。
「ロビン・・・」
人の姿に安心感を覚えたウソップの瞳から、次々と涙が溢れ出し、近づいたロビンに抱き締められた。
「俺・・・俺さぁ・・・」
背中を摩られながら、ウソップは夢の内容を全てロビンに告白した。
「大丈夫よ・・・悪い夢を見ただけなんだから・・・」
ロビンはウソップを抱える様にして椅子に座らせると、煎れたてのコーヒーを差し出した。
「俺・・・今までは皆にからかわれるのが嫌で、自分の気持ちを誤魔化していたんだ・・・いや、カヤにもそうだったのかもな・・・でも、さっきの夢でロビンの言いたかった事が嫌って程解かって・・・」
それまで黙ってウソップの話を聞いていたロビンが、自分の分のコーヒーを持って向かいの席へと座った。
「・・・女はね、いくら強く見えても待っていたい物なのよ・・・そう、大切な人の大切な一言を・・・ね?」
その一言に顔を上げたウソップを見て、ロビンはニッコリと微笑んだ。
「俺、明日手紙書くよ。・・・俺の気持ちを正直に伝える為に」

翌日、伝書カモメに手紙を託したウソップの顔はいつも以上に晴れ晴れとしていて、それを見たサンジとナミが、いつもの様にからかうと、ウソップはそれを明るく笑い飛ばした。
「お前ら、そんなに悔しかったら頑張って大切な人を見つけるんだな」
ウソップはそう言うと、背後にいたロビンに、皆に気付かれない様にウインクした。

■終わり■


■あとがき■
終わりましたー♪
最初はウソカヤにするつもりで書き始めたんですが、ウソロビの方がしっくりくる感じがしたので、思い切って友情物に方向転換しました。
実は大好きなんですよ、ウソップv
意外に思われる方も多いかもしれませんが、息子にするなら彼が良いです♪
後はロビンですが、やっぱり恋の悩みはロビン姐さんに解決してもらうのが一番かと思って彼女を抜擢しました。
マイナー好きですいませんねぇ(苦笑)




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