鴨の恩返し(サンジ・ゾロ・カルー) |
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これはアラバスタの内戦終結直後のお話。
「グアー!!」
買出し中のサンジとウソップの元へ大声を張り上げながら飛んできたのは、サンジを捜して街を彷徨っていたカルーだった。
「おぅ、どうした?カルー。」
カルーはサンジを見つけた途端、物も言わずに袖を引っ張り出し、サンジはウソップに荷物を預けると、カルーの背に乗せられ、すぐさま来た道を引き返して行った。
サンジが連れられた先には大きな木が一本立っていて、その下には怪我をして包帯だらけのゾロの姿があった。
「?何だよこんな所に連れて来て・・・」
カルーから下りると、サンジはゾロの元へと歩み寄った。
「ん?・・・それは?」
ゾロの両手の中には、巣ごと落ちたらしい3羽のヒナがさえずっていた。
「どうやらこの上から落ちたらしいんだが、この木はやたら滑りやがって登れねぇんだ」
ゾロはチョッパーの目を盗んで練習している時に、カルーに連れて来られたとサンジに説明した。
「・・・こんな時、ルフィさえ元気ならなぁ・・・」
ゾロの呟きに、二人は宮殿で眠ったままのルフィの事が一瞬脳裏をかすめたが、今は落ちたヒナ達を元の場所へ戻す事が先決だった。
「よし、三人居れば何とかなるだろ?カルー、ちょっとキツイが頑張ってくれよ?」
サンジの一言に、言いたい事を理解したカルーは、木の根元にうずくまった。
「よし、ゾロはそのままヒナを抱えてろよ?」
サンジはそう言うと、ゾロの股に頭を入れて肩車をし、うずくまって準備をしていたカルーの上へと立った。
その後カルーは、気力を振り絞ってゆっくりと立ち上がると、ゾロの目の前に巣があった枝が見えた。
そこでゾロは、その枝によじ登ってヒナ達と巣を元の場所へと戻した。
ところがその直後、親鳥が何処からともなくやって来て、ゾロに攻撃を加え始めた。
「わっ!!・・・こらっ!!・・・やめろ・・・!!」
親鳥の攻撃を手ではらった瞬間、ゾロはバランスを崩して空中に投げ出された。
「ゾロ!!」
サンジは反射的にカルーの背中から飛び降りると、ドサッと言う音と共に、ゾロはサンジに抱き抱えられる形となった。
「大丈夫か?」
「あ・・・あぁ・・・サンキュ」
サンジの思いがけない行動に驚きながらも、ゾロはサンジに礼を述べた後、ゆっくりと下ろされた。
「・・・これ以上怪我人増やしたら、チョッパーに泣かれるからな・・・」
照れ隠しとも取れるサンジの台詞に、ゾロは苦笑はしたが、いつもの悪態は付かずに木の上を見つめた。
「さて、用事も済んだし、今日はもう戻ろうぜ?」
2人と一羽は、ゾロの一言を合図にしたかの様に、宮殿に戻って行った。
その日の夜。二人は何故かチョッパーに呼び出されて、宮殿の裏手にあるテラスへと来た。
「何だよチョッパー、こんな時間に呼び出して・・・」
二人は来たのを確認すると、チョッパーは腰掛けていた箱から飛び降りた。
「俺はカルーにこれをお前達だけに渡して欲しいって頼まれただけなんだ。・・・何でも昼間のお礼とか言ってたけど、一体何の事だ?」
「ん?・・・いや、ちょっとだけカルーの手伝いをしただけなんだ・・・な?ゾロ?」
「あ・・・あぁ」
チョッパーに昼間の話をすると、心配するのが目に見えて解るだけに、二人は嘘を付いて、チョッパーを部屋に帰した。
「何だこれ?」
チョッパーの座っていた小さいが、頑丈に出来ている箱を開けてみると、中には高級なブランデーと、グラスが2つ、その端には手紙が一通入っており、内容は話を聞いたビビからの感謝の気持ちと、カルーがその事を懸命にビビに伝えた事が綴られていた。
「ビビちゃん・・・」
「カルー・・・」
各々が違う名を口にした後、どちらともなくグラスを手に取り、互いに酌をした。
「・・・たまには2人で飲むのもアリだよな?」
「たまにはな・・・」
月明かりの元、グラスを重ねた音だけが、静寂に包まれたアラバスタに響き渡った。
―END―
■あとがき■
終わりましたー!!
今回の話は「子供でも読めるサンゾロ」がテーマです。(何じゃそりゃ)
「サンゾロ+カルーで健全」と言うリクエストでしたが、実はこのリクエストが一番書きやすかったです。
私はカプ物だと、どうしても邪な方へと考えが行ってしまう傾向があるのに対し、動物や子供が絡むと、絶対的にそれが無くなって、ほのぼのとした話を書く傾向があるんです。
で、今回はあえてカプ表示を外して、完全な友情物にさせて頂いたと言うわけですが、取り様によってはいかようにも解釈出来ると思うので、これでお許し頂けたらと思います。
こんな物で宜しければ、謹んで進呈致しますので、お受け取り頂ければ幸いです。