Ambition(エース・ルフィ) |
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「お前なんかが海賊になれるかよ!」
「なるよ!絶対海賊王になるんだ!」
エースのからかいに対し、ルフィがムキになって怒る。
それがこの兄弟の日常だった。
そんなある日の事。
ルフィは起きるとすぐに、家の裏手にある大木の下へと向かった。
幹に縄の巻かれたその木は、兄弟にとっては格好の練習道具だった。
「行くぞー!ゴムゴムのー・・・」
そう言ってルフィが腕に伸ばしたが、突然腕を引っ張られて、ルフィはそのまま地面に尻餅を付いた。
「いちいち腕を伸ばしていたら、こうされて終わりだぞ?」
そう言いながらルフィの腕を遠くで掴んでいたエースは、ルフィの元へとやって来た。
「お前はそんな事しなくても、ちょっと勢いつければ充分伸びるだろ?」
エースに言われるままに腕を前に突き出すと、確かに腕は充分な速度を付けて伸びて行った。
「やっぱりお前に海賊なんて無理だ」
「何だと!くっそー!!絶対海賊王になってやるからな!!」
ルフィのいつもの一言に、エースは半ば呆れた顔で手を離した後、海を一望出来る風車塔のてっぺんに登り、ルフィもまた後を追う様に上ってきた。
「ルフィ」
「ん?何だ?」
屋根の上に座ったエースは、隣に座ったルフィに声を掛けると、急に真顔になった。
「俺、明日海に出る。海賊になる為に」
「!!!?」
これまでルフィが海賊になる事を反対していたエースの思いも寄らぬ告白に、ルフィは驚いて立ち上がった途端、バランスを崩して屋根から落ちそうになった。
「危ない!!」
反射的にエースの伸ばした手をルフィが掴み、ルフィは屋根にぶら下がる形になった。
「・・・お前には海賊は無理だ。やめろ」
「!!・・・だったら何でエースは海賊になるんだよ!自分ばっかりずるいじゃんか!!」
ルフィはぶら下がったままの姿勢で怒鳴りつけると、エースはルフィの腕を軽く引っ張って、ルフィを屋根の上に戻した。
「俺のが先に言ったのに・・・何でエースばっかり・・・」
自分にはなるなと言っておきながら自分より先に目指す道を進もうとしているエースに腹が立ち、知らず内に目から大粒の涙が溢れ出していた。
「俺・・・今のエースと同じ年になったら、絶対海に出て海賊になってやる・・・。そして、俺が絶対海賊王になってやるからな!」
「・・・家の事、頼んだぜ」
涙声で怒鳴るルフィをチラリと見た後、エースはそう言い置いて下へと降りて行った。
「・・・なぁ、起きてるか?」
「あぁ」
夜になって帰ってきたルフィは、マキノの店で食事を済ませてきたらしく、黙ったまま自分の臥所へと潜り込んでしまった。
そして夜中になってエースが2段ベッドの下側に入ってきた事を確認すると、ルフィは上からそっと声を掛けた。
「・・・本当に行くのか?」
「・・・あぁ」
「・・・やめろよ・・・死ぬかもしれないんだぞ・・・」
「・・・そうかもな」
「そうかもなじゃねぇよ!俺は良いけど、エースは駄目だ!」
「・・・ルフィ。・・・男が一度口にした事は、死んでも守るんじゃなかったのか?」
「!!」
その言葉を聞いたルフィは、そのまま黙り込んでしまい、何時しか眠ってしまっていた。
朝、空腹で目覚めたルフィが下を覗くと、既にベッドの布団は片付けられていて、まさにもぬけの殻となっていた。
「エース?」
ルフィは溢れそうになる涙を、パジャマの袖で拭うと枕元で妙な音がした。
「?・・・手紙?」
ルフィは枕元に置かれていた手紙を取ると、半身を起こして手紙を読み始めた。
内容は、家の事を頼むと言った内容と共に、海で先にお前を待つと言った内容だった」
「エース・・・」
ルフィは全てふっきれたと言った様子でベッドから飛び降りると、勢い良く部屋を後にした。
―おわり―
■あとがき■
終わった・・・
実はこれ、リクを受けてから数ヶ月放置していた作品でして、本当に申し訳無い事をしました。
リクエストはD兄弟の友情物と言う事で、私はまず自分の兄達を想像したんですが、うちの兄貴達はサンジとゾロ並に仲が悪いので、全く参考にならず(お互いを認めていると言う点でも似ている)、子供達を参考にしようと思ったら、歳が離れているせいもあって、ラブラブすぎでこれまた参考にならず、結局兄2人+息子2人を掛け合わせて話を考えました。
ルフィって、やっぱり兄であるエースを心から信用し、かつ尊敬していると言うのが凄く印象に残っていたのでこんな話になりましたが、こんな物で宜しければ、謹んで進呈したいと思います。