ほんとの気持ち(サクラ大戦/マリア・カンナ) |
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「なぁ、墓参りに付き合わないか?」
長かった戦いに終止符を告げ、平和を取り戻した帝劇にて、カンナがマリアに告げた一言から、物語は始まる。
それから数週間後、二人はカンナの故郷である沖縄の地を踏みしめていた。
「予想はしてたけど・・・暑いわね」
「そりゃそうさ、何たって日本の一番南だからな」
秋だと言うのに、帝都の夏と変わらぬ暑さで、マリアが驚きと困惑の表情を浮かべながら船を下りると、カンナは苦笑しながら、マリアの荷物も一緒に持ち上げて、乗り換えの船に向かった。
「あたいの家のある島は、ここからもう少し南に行ったところなんだ。しかし、とりあえず船酔いだけはしなくてホッとしたよ」
カンナはそう言って、先程買ったばかりの冷えたラムネをマリアに手渡すと、暑さにぐったりとしていたマリアの顔に、生気が戻った。
船で暫く南に向かった先に、カンナの生家のある島は見えた。
カンナは船旅の疲れを全く見せずに、マリアの荷物を抱えて、真っ先に下船し、マリアと共に、まっすぐ自宅を目指した。
カンナの家は当然の事ながら人気も無く、がらんとしていたが、庭などはしっかりと手入れされていた。
二人は中に入って一息ついた後、庭に咲いていた花をいくつか摘んで、カンナの両親の眠る墓へと向かった。
二人で黙祷をささげた後、墓の前で酒盛りは、カンナの中では常識となっているらしく、困惑するマリアをよそに、豪快に酒を飲み始めた。
「ほら、マリアも飲めよ。こんな場所でもないと、せいせいと酒なんて飲めないだろ?」
カンナがそう言って、笑いながら泡盛の入ったグラスを差し出すと、マリアもようやく飲み始めた。
事件の無い日の夜は二人で抜け出して飲みに行く事もあったが、二人とも、いつ起こるか解らない事件の陰に警戒し、酔った事など一度も無かったが、事件の解決、そして米田の引退を目の当たりにして、二人はようやく酒に酔える日を取り戻したのだった。
「・・・なぁ、どうしてプロポーズを断ったんだ?」
ほろ酔いになったカンナがトロンとした目でマリアを見ると、マリアは一気に酔いの醒めた顔で、カンナの顔を見た。
「あたい、帝都を出発する前の日に、隊長と飲みに行ってさ・・・」
その一言に、マリアの肩がピクリと震えた。
「・・・隊長、泣いてたぞ・・・あたい、男が泣く所なんて、初めて見たよ・・・よっぽど悲しかったんだろうな。」
「・・・で、隊長は何て?」
「『マリアを頼む』って・・・言った本人も、傷付いていると思うからって・・・」
「・・・」
二人は暫く黙って飲み続け、気付けば月が夜の海を照らしていた。
「戻るか」
二人は家に戻り、布団を並べて床に着いたが、かなり酔っているにも関わらず、二人は眠れなかった。
「なぁ・・・どうして断ったんだ?」
「・・・」
「あの時、あたい達も米田さんも隊長がお前をふったんだと思っていたんだよ。だから、隊長の話を聞いたとき、すぐには信じられなくてな・・・でも、お前の様子を見て、お前が言い出したって事は解ったよ・・・でも、どうして・・・」
「・・・解らない。・・・ただ・・・私だけが幸せになったらと考えると、決心がつかなくなったのよ・・・」
「何だよそれ!?」
カンナは布団を跳ね飛ばすと、半身を起こしてマリアを見た。
「お前、お前が大神さんと結婚したら、皆が不幸になるとか考えてるんじゃないだろうな?」
カンナが驚きで目を丸くしてマリアに問いただすと、マリアもまた、同じように目を丸くした。
「え?・・・だって、さくらとかアイリスとか・・・」
「バッカだなぁ・・・あいつらだってそんなに子供じゃないって・・・」
カンナはあきれ返った顔をで布団にあぐらをかくと、頭をぼりぼりと掻きながら、マリアの顔を見た。
「あのな、長安を倒して帰ってきたお前達を見て、あたい達はこの二人ならって思ったんだよ。だからグリシーヌだって素直に巴里へ帰ったんじゃねぇか・・・お前、あたい達をダシにしてるが、本当は、自分が幸せに慣れてないから怖いんじゃないのか?」
「・・・」
「さくらやアイリスは、お前達が幸せになるのを凄い楽しみにしてたのに、いきなりの破綻で、隊長に食って掛かってたんだからな」
「そんな・・・」
「いや、理由が解った以上、お前も大神さんも責めるつもりは無いよ。ただ、自分が幸せになる事を恐れるのはやめろよ。そんなの誰も喜ばないぞ?」
カンナがそう言った途端、布団の中で話を聞いていたマリアは起きあがって、カンナの前に正座をした。
「私は・・・幸せに慣れてない・・・」
「だから何だ。慣れてないなら、余計幸せが感じられて良いじゃねぇか」
「・・・でも、怖いわ」
「・・・あたいも、結婚した事無いから、その辺の気持ちは良く解らないけど、でも、始めない事には何も変わらないんじゃないのか?」
「カンナ・・・」
「大丈夫、もし大神さんがお前を泣かせる様な事をしたら、あたい達がとっちめてやるからよ」
カンナはそう言うと、向かいに座るマリアの手を取り、真顔になった。
「お前が信じた人だろ?だったら迷うな」
カンナの一言にマリアは黙って頷いた。
マリアが本当の気持ちを話した数日後、島に連絡船がついた。
「お?やっと来たな」
丘の上から港を見ていたカンナは、そう言うと、急いで丘を駆け下りて、家に居たマリアを連れ、港へ向かった。
「!・・・大神さん」
「マリア・・・迎えに来たよ」
港でキョロキョロと辺りを見まわしている大神の姿を見かけた途端、マリアは驚きの声を上げ、大神は、照れくさそうにマリアを見た。
「カンナ、これって・・・!?」
そう言ってマリアが振りかえると、そこにはすでに、カンナの姿は無かった。
マリアは大神と共にカンナの家に戻ると、玄関先にはマリアの荷物が既にまとめられた形で並んでいた。
「あたいはもう2〜3日ここに残るから、悪いけど先に帰っててくれよ」
カンナがいつもの調子でそう言うと、マリアは荷物を持ちかけた手を下ろした。
「おいおい、あたいが居なければ寝れないって歳じゃないだろ?それに、あたい達はともかく、隊長は早く帰らないとマズイだろ」
カンナは諭す様に言いながら、マリアの荷物を手に取ると、渡しながら小声で囁いた。
「ここから先は、二人できっちり話し合わないと駄目だ。もう逃げは無しだぞ?」
カンナは言い終えると、マリアに荷物を押し付け、家の中へ入ってしまった。
「行こう」
大神に言われるままに港に向かったマリアがカンナの家の方を振りかえると、カンナがこちらに向かって大きく手を振っていた。
「ありがとう、カンナ」
マリアはそう呟いた後、沖縄の地を後にした。
マリアと大神の二人が帝都に戻ってから数日後、約束通りに戻ってきたカンナを喜ばせたのは、大神とマリアの婚約と言う、由里の噂話だった。
―終わり―
■あとがき■
えー、まずは深森さん、サイト1周年おめでとうございます!!
あと、毎度の事ながら、遅れて申し訳ありませんm(__)m
えー、今回は友情物のリクエストでしたので、マリッジ・ブルーをテーマに持っていきましたが、最近このパターンばかりの気もしないでも無いです(^^ゞ
マリアの場合、私から見ると、かなり薄幸な女性と言う印象が強いので、幸せに対してどういう反応を見せるかなと考えたつもりですが、こんな物でも受け取っていただければ幸いです。