透明(サクラ大戦/レニ) |
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これは、大神が巴里滞在中のお話。
「おい、ベッドはここで良いのか?」
「そうね、窓際に置いて頂戴」
紅蘭とカンナが届いたばかりのベッドをレニの部屋へ運び込むと、次にアイリスが洋服ダンスを背後でふわふわと浮かせて部屋に入ってきた。
「マリア、このタンスは?」
「そうね、ベッドの向かいに置けば良いと思うわ。・・・こんな感じで良い?レニ。」
アイリスが言われた場所にタンスを移動すると、マリアは振り返って、入口近くでその様子を黙って見ていたレニに話し掛けた。
「あ、うん。機能的にまとめられて良いと思う。」
いままで呆然と自分の部屋が変わっていく様を見ていたレニは、マリアに声を掛けられた途端、ハッとした顔でマリアに返事をした。
「服は自分で入れた方が良いわ。どこに何が入っているか解らなくなってしまうからね」
マリアが微笑みながらレニに言うと、レニは早速トランクを開けて衣服をタンスに入れ始めた。
「レニの服って、もしかしてそれだけ?」
数着の衣装が入っただけのタンスを見て、さくらが思わず口を滑らせた。
「うん。必要最低限の衣服だけ持って来てたから」
「でも・・・そろそろ買い替えの時期かもしれないわね。」
先日レニのズボンの丈を直したさくらは、掛けられた衣服を見つめて呟いた。
「!・・・そうでーす!私、良いもの持ってまーす♪」
様子を見に部屋に入ってきた織姫は、さくらの呟きを聞くと同時にそう言って部屋を飛び出した。
「じゃーん♪これをレニにあげるでーす」
暫くすると、真新しいワンピースを持った織姫が、再び部屋に入ってきた。
「これ、この前買ったですが、私にはちょっち小さかったでーす。返品しようと思ってたですが、レニにプレゼントしまーす♪」
「・・・織姫にしては大人しいデザインだし、レニに似合いそうね」
最初唖然としていたマリアが思い出した様に口を開くと、皆一様に頷いた。
「でも・・・良いの?」
「当たり前でーす、タンスの肥やしは女のステータスですからね、レニも洋服一杯買って、もっとお洒落するでーす」
押し付けられたワンピースを手に驚いて織姫を見ると、織姫は嬉しそうにレニに笑いかけた。
それから数日間の間にレニのタンスは洋服で一杯になった。
皆、自分の着られなくなった洋服や着物などをレニに与えた故の事だった。
それからレニは色々な服を試す様に色々着てはみたが、結局いつものボーイッシュな格好に戻ってしまった。
「やっぱりレニは動き易い格好が好きみたいね・・・」
「そうやな・・・チャイナも慣れないと着にくいからなぁ・・・」
「でも、レニはレニなりに気を使っていたと思うぜ?」
中庭でフントを遊ぶレニを、廊下の窓から見ていたさくらと紅蘭が話していると、カンナが後ろから声を掛けた。
「あ、カンナさん」
「いつの間に来たんや?」
「お前らがボーっとレニを見ている間にだよ」
カンナはそう言うと、二人の間に入ってレニを見た。
「・・・あいつさ、みんなに貰った服を着て、それを似合うと言われるのが嬉しかったとは思うぜ?でもさ、それは本当のレニじゃない。」
「・・・」
「あいつは何て言うか・・・透明なイメージがあるから、どんな服でも似合うんだよな。だから皆もつい自分の好みに合わせようとするけど、結局レニはレニなんだよ」
「・・・」
核心を突いたカンナの一言に、二人は黙り込んだまま俯いてしまった。
「・・・ほら、そんなレニの事を1番解ってる奴が来たぜ?」
二人が顔を上げて外を見ると、紙袋を抱えたアイリスが中庭に入ってくる所だった。
「レニ、これあげる」
「アイリスも僕に?」
「うん。・・・アイリスのお洋服じゃレニには小さいから、アイリスはアイリスにかあげられないものにしたの」
アイリスはそう言うと、紙袋から小さな髪飾りを取り出した。
「かえでお姉ちゃんに教えてもらって、アイリスが自分で作ったの。これならいつも着ている服にも合うと思って・・・」
レニが改めて髪飾りを見ると、クリアブルーのビーズで作られた、髪留めになっていた。
「アイリスありがとう・・・僕、こういうのずっと欲しかったんだ。大切にするからね」
レニはそう言って髪留めを髪に付けると、アイリスは満面の笑みを浮かべてレニを見た。
「レニ、すっごい似あうよ。レニ大好き!」
そう言ってレニに抱きつくアイリスを見て、三人は静かにその場を後にした。
―終わり―
■あとがき■
何とかGW中にアップできましたが、最後がちょっと中途半端だったかな・・・。
お題が透明だったので、最初紅蘭がらみの透明な薬ネタを考えたんですが、それじゃ、あまりにもありきたりなので、急遽変更。
で、考えたのがレニのイメージとなった訳です。
ネタ元は以前友人が
「レニは透明なんだよ」
って言った事を思い出して、それにプラスして、4での部屋の改装を併せて今回の話となりました。
こんな話で宜しければ、感想などいただけると嬉しいです。